(歌詞対訳) アンソニー・フィッシャー司教による神学的解説(訳) 第23 回WYDのテーマソングに選ばれたのは、“Receive the Power”です。この歌は、教皇ベネディクト十六世が選んだWYDシドニー大会のテーマ、「あなたがたの上に聖霊が降ると、あなたがたは力を受ける。そ して、わたしの証人となる。」(使徒1章8節)に沿って作られています。このテーマは、2つのことを表しています。ひとつは、聖霊を送るというキリストの 約束の更新です(使徒1:8a、参照はルカ24:44-53、ヨハネ7:37-39、14:25、16:13-14、20:22)。五旬祭に使徒たちの上 に聖霊が降った時、キリストの約束は果たされましたが、この約束は今でも続いています。(使徒2章、参照は使徒3:31、4:8、4:31、8:14- 17、8:39、9:17、10:44-48、11:12-18、13:52、15:8、19:1-7)。もうひとつは、与えられた賜物である聖霊によっ て引き出された応答と、聖霊の力が導く生き方についての、キリストによる説明です。それは、弟子たちが、「地の果てに至るまで、キリストのイエスの証人」 であることを示しています(使徒1:8、5:32、10:34-43、参照はルカ24:44-53、マタイ28:19、ヨハネ15:27)。 ■聖霊の中で交わされる、キリストと若い弟子たちの対話 1) このテーマソングは、WYDのテーマの2つの側面を非常によく捉えています。コーラス部分は、復活したキリストによる世界の青年への呼びかけです。「アレ ルヤ、アレルヤ!聖霊から力を受けなさい。アレルヤ、アレルヤ!世の光となるために力を受けなさい」(Alleluia, alleluia! Receive the power from the Holy Spirit. Alleluia, Alleluia! Receive the power to be a light unto the world)。verse部分では、「地の果てまで、わたしたちは従います」(we will follow to the ends of the earth)、「わたしたちはあなた(キリスト)のみ心に答え、み旨を行います」(we will answer and do Your will)、「わたしたちはあなた(キリスト)のいつくしみと限りない愛を、永遠に証しします」(we’ll forever testify of Your mercy and unfailing love)、「わたしたちはあなた(キリスト)を礼拝します」(we worship You)と青年が答えます。聖霊において交わされるキリストと若い弟子たちのこの対話は、福音宣教、カテケジス、信仰の行い、そして礼拝の中心にありま す。この対話こそが、WYDの中核をなすものです。 ■テーマソングに見る聖書 WYDの目的と成果のひとつは、神のことばである「聖書」の豊かさを、世界の青年が再発見することです。そのため、歌の中心テーマだけでなく歌詞のほとん どすべてが聖書に沿っています。聖霊のめぐみが与えられたために、弟子たちは神のみことばの重要な宣言を証しするとは、「使徒言行録」が明確にしていると おりです(例、使徒言行録4:33)。 ■テーマソングに見る聖霊 WYDシドニー大会のテーマは、生活の中で働く聖霊の力について考えるよう、わたしたちを招いています。「聖霊を受けなさい」(Receive the power of the Holy Spirit)とキリストが青年を招く形式で、コーラス部は聖霊を3度求めています。青年たちは、「あなた(キリスト)の霊によってわたしたちはみ心に答え、み旨を行います」(As Your Spirit calls to rise we will answer and do Your will)と答えるのです。この歌が強調する聖霊についての部分こそ、WYDシドニー大会の特徴なのです。 ■テーマソングに見るキリスト WYDシドニー大会のテーマは、父のもとに上げられる前にキリストが弟子たちに語った最後の言葉から取られています。聖霊を送るというキリストの約束は、 証しして信仰を宣言し、さらに殉教さえもいとわずに生きるようにと弟子たちを導きます。けれども弟子たちは一体誰についての証しをするのでしょうか。聖霊 の力を与えられた青年が証しするのは、彼ら自身のことでもなく聖霊についてでもなく、キリストのことです。「あなたがたはわたしの証人となる」とキリスト は言いました。この歌は、その呼びかけと励ましに対しての、信じる弟子たちの答えを表しています。 ■テーマソングに見るエウカリスト 聖霊は、わたしたち自身の力を強めるために与えられるのではなく、礼拝と感謝を捧げるためにわたしたちをつき動かすものです。それゆえ五旬祭に聖霊で満た された弟子たちは、「使徒の教え、相互の交わり、パンを裂くこと、祈ることに熱心であった」(使徒2:42)のです。歌の1番で青年は「あなたにおいて、 わたしたちは喜びます」(in Your presence we delight)と歌い、ブリッジでは「神の小羊、わたしたちはあなたを拝みます。聖なる唯一の方、わたしたちはあなたを拝みます。いのちのパン、わたし たちはあなたを拝みます。インマヌエル、わたしたちはあなたを礼拝します。」(Lamb of God, we worship you. Holy one, we worship you. Bread of Life, we worship you. Emmanuel, we worship you.)(ヨハネ1:29、1:36、6:69、6:35、マタイ1:33)と歌います。これは、カトリック信者にとって自分たちの礼拝する聖体の主を 思い起こす礼拝の歌となります。WYDのクライマックスは、教皇ミサです。WYDの成果のひとつは、大いなる聖体礼拝をすることです。 ■テーマソングに見る普遍性‐カトリック的‐ この歌は「すべての国民、すべての部族が、共に集い、あなたを拝む」(Every nation, every tribe, come together to worship You.)(黙示録7:9-10、参照は5:9-11)で始まります。これは、巡礼者として、福音の使者として、WYD08でオーストラリアに集う全民 族、言葉の違う民である青年すべてを指しています。こうしてこのテーマソングが持つもうひとつの聖霊性を説いているのです。五旬祭の場面は、かつてのバベ ルの塔に対する反転です。国々はもはや他の国々と競うことはなく、異なる言語が人々を分け、混乱させることもありません。かわって聖霊が彼らをひとつに結 び、互いを理解させるのです。これが五旬祭の賜物であり、WYDの賜物なのです。 ■テーマソングに見る終末 ヨハネの黙示録には、「あらゆる国民、種族、民族、言葉の違う民の中から集った、だれにも数えきれないほどの大群衆が、王座の前と小羊の前に立って、大声 でこう叫んだ。『救いはわたしたちの神と、小羊とのものである』」(黙示録7:9-10、参照15:3-4)というビジョンがあります。WYDシドニー大 会のテーマソングは、聖霊の力が人々の間の分裂を止めて、「あらゆる国民、すべての種族が」「神の小羊であるあなたを礼拝するために集う」日の前兆であ り、その日を予告しているのです。 ■独自性と継続性 聖霊の招きと聖霊の力、そして青年による証しが繰り返し言及されるこの歌は、WYD08シドニー大会の独自性を示すとともに、WYDの父、ヨハネ・パウロ 二世が選んだカテケジスのテーマもうまく呼び起こし、歌の中に融合させています。「インマヌエル、わたしたちと共にいる神」(2000年ローマ大会)、 「世の光」(2002年トロント大会)、「わたしたちはあなたを拝みます」(2005年ケルン大会)。このようにWYDシドニー大会のテーマソングは、シ ドニー大会の独自性と20年以上にも渡るWYDの継続性、さらに、「インマヌエル、神はわたしたちと共にいるという意味」のイエスと最初に名づけた大天使 ガブリエル(マタイ1:23)と、イエスを「神の小羊」と言った最初の人洗礼者ヨハネ(ヨハネ1:29、1:36)に続く、2000年の継続性をも表して います。 - この歌は唱和形式で構成されています。Verseはコーラス部の前の節のことです。日本語訳では便宜上、1番、2番としています。1番、2番は青年の宣言、コーラス部はキリストの呼びかけとなっています。
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